目を覚まし辺りを見回すと、そこには椅子に座って私の手を握っている星絆と窓に寄りかかる透真くんの姿があった。
どうやら救急車でいつもの病院に運ばれてきたらしい。
「ごめんね」
私は星絆に違和感に気付かれてしまったような気がして慌てて平気なふりをした。
「最近貧血が酷いんだよね。ただそれだけだから」
「もう、本当に心配したんだよ?」
「ごめん。でも、もう大丈夫だからきっと明日には退院できるよ」
本当は薄々気付いていた。
けれど、星絆と透真くんの前では元気な私で居たかった。
偽りの笑顔といつもより微妙に声を高くして振舞った。
それから少しして星絆はバイトがあると言って帰って行った。
ホッとしたのも束の間、透真くんの顔を見るとなんとも癒えない気持ちになった。
「ごめんね、約束を守れなかった」
透真くんと2人きりになってからの第一声はそれだった。
今日は前々から約束していた花火の日。
抜け殻みたいな私を見て、透真くんは、
「約束のことは気にしなくていいよ。俺は、蒼来が無事だっただけで幸せだから」
と、気を遣わせてしまった。
透真くんが提案してくれた花火を見られなくなり、生きがいにしてきたひとつを失った私は、透真くんに謝り続けることしかできなかった。