陽輝さんにも日葵ちゃんにも会うことなく、灯さんが星になった日に私は退院した。
会わなくて正解だったと思う。
最後に言葉らしい言葉を交わせなかったけれど、きっと人生ってそういうものだから。
そう思ってあえて考えないようにした。
今考えられるのは透真くんとの約束のことだけ。
おそらく花火を見に行ける。
早まる心を抑えながら、日中は部屋に籠ってベッドで身体を休めて過ごした。
せっかくの退院を無駄に出来なかった。
昼寝から起きて映画を見ていると、耳元で通知音がした。
星絆からのメールだった。
《15日の朝、遊びに行かない?》
《うん、行きたい》
迷うことなく返事をすると、すぐに返信が返ってきた。
《じゃあ決まり。予定は私が立てておくね》
それきり連絡は途絶えて、あとから集合時間だけが送られてきた。
星絆の計画に不満はないのだけれど、当日のことを考えると気が気じゃない。
おもむろにテレビをつけると、お笑い芸人が司会を務める特番があった。
夏休み企画と称して小学生のお悩みを解決するその番組を流し見しながら、私にもそんなころがあったな、と思う。
どうして生きているのかとか、人は死んだらどうなるかとか。
そんなことを考えていたのが懐かしい。
そう思えば、少しは大人になれたのかもしれない、なんてことを考えてテレビを消した。