「夢、決まった?」
 
連絡先を交換してから、透真くんとは電話をするようになった。

メールでもいいのに、なぜか電話だった。

彼の生活も忙しいのか、あれから透真くんには会えていない。
 
とはいえ、それが普通で、今までが特別だっただけと言われればそれもそう。

それに、ご家族が退院したのなら、その方がずっと幸せなことで。
 

「ううん、やっぱり私は夢を持たない方がいいのかも」
 
考え抜いた末に辿り着いたのは夢を持たないことだった。
 
夢を持たなければ、夢を叶えられない絶望感を味わうことなく最期を迎えられる。
 
「そんなことないよ。なぁ、蒼来は夢ってなんのためにあると思う?」
 
「叶えるためじゃないの?」
 
「一般的にはそうかもな」
 
「違うの?じゃあ透真くんの思う夢は?」
 
「それはまた今度。もう少し考えてみてよ」
 
「わかった」
 
「じゃあ、切るね。またいつか」
 
そう言って電話が切れた。
 
透真くんの思う、夢、は私にわかりっこない。

無理矢理苛立ちを抑えながら携帯をポケットに入れた。

 
未来のある彼と夢の会話をするのは酷だった。
 
私には描いた夢を叶える時間はない。
 
時間が、ない。