次の日もそのまた次の日も屋上に向かう。


昨日は見かけなかったけれど、今日は透真くんの姿があった。
 

「今日もお見舞い?」

 
「うん。それと、蒼来を待ってた」 
 

「私を?」
 

「うん。俺、蒼来の連絡先も病室も知らないからここでしか会えないと思って」
 

「そっか」
 
透真くんが私を待っていたのが嬉しくて、でも恥ずかしくて。

 
それでも、嬉しさの方がずっと強かった。

 
「あのさ、もしよかったら交換しない?連絡先」

 
「いいよ」
 
緊張した面持ちの彼を微笑ましく思いながら、連絡先を交換した。
 

友達リストに表示される『透真』という文字に、感情が高まった。

 
入院生活を送ってばかりの私には数少ない友達がまたひとり増えた。
 


「あのさ、蒼来に夢はあるの?」

 
急に改まったことを聞く彼に驚きながらも真剣に考えてみる。

 
「夢か……。最近は考えたこともなかった」
 

「そうなんだ」


「透真くんには?」


「俺は、有名になることかな」

 
抽象的な夢ではあったけど、夢を持てることを羨ましく思った。
 

「いい夢だね」
 

「そうか?」

 
「うん、よくわからないけどいい夢」
 

「なんだ、それ」

 
自分でも何が言いたいのかが分からなかった。


ただ、夢を持てるだけ羨ましいと思った。
 

「蒼来も持ってみてよ、どんな夢でもいいから」
 

彼の言葉を受け止めて思考を回転させてみる。
 

その間に、「また教えてよ」と言って屋上を後にする彼は、風のような人だ。
 

何を考えているかわからないけれど、何かに向かって必死に生きているのが感じられた。


透真くんには刺激を貰ってばかりだ。