「体調はどうだ?」


そう言って顔をのぞかせたのは作業着を着た父だった。
 

職をいくつか掛け持ちしている父は、また、私の見覚えのない服を着ていた。

 
手には着替えと日用品を入れたビニール袋。


何度見ても自分の無力さを痛感する光景だ。
 

「元気だよ」

 
私は父の体調の方が気にはなったけど、何も言えなかった。

 
私のために必死で汗水流しているのを知っているからこそ、言えなかった。
 

「何か必要なものはある?」
 

父は持ってきたものを棚に片付けながら言った。
 

「ううん、今は大丈夫」

 
反抗期ではないけれど時折気まずい空気が流れるのは、私が父の負担にしかなっていないから。

 
父は最愛の妻を夢見病で亡くし、娘も夢見病で亡くすことになる。
 

父の努力が報われることはない。足掻いたところで結果は既に決まっている。


それでも、父は私を生かし続けてくれる。
 

けれど、父のことを思うと酷な気がした。