チュウカの肩からカラスが飛び立つ。それを見て彼はそういえば、『カラス』だなんてあだ名のときもあったなと昔を懐かしんだ。今はなんだっけなと思い、ああそうだチュウカ、か。そう思ってニヤける。
電信柱と電信柱の間の電線にしゃがむように立ち、チュウカは周囲を眺めていた。ここは街であることは変わりないようだが、表でも裏でもない。俺の街じゃない。そう思っていた。
「面倒なのもうろついてるしよー、なんだかね。けけ」
姿を現したり消えたりする超能力者のような人間がさっきから周りをうろついている。こっちに来て以来、何やら動きを監視されているようであった。
監視。
この異世界に来る前もそうだった。その日も軍の監視から逃れるどころか、喧嘩を吹っ掛けていた日であった。それはいつものことで、軍の連中のドンパチを偽中華包丁一本で押し返していた頃合いだったと記憶している。
「おりゃあああ!!」
「撤退! 撤退ー!」
戦車の装甲にどうやってか穴をあけるほどの衝撃を与え、大破・走行不能にさせたチュウカは雄叫びを上げ、逃げ惑う軍へ追撃を喰らわさんと、次の攻撃として手にしていた立て看板を投げた。看板には「飛び出し注意」と小学生のイラストが書かれている。
「くそっ、腰抜け共。逃げ足だけは早いぜ……あっ?」
瞬間。
刹那。
光。
それは軍のものではない、宙のどこかが光ることで視界を手で遮らざるを得なかった、その次の時であった。チュウカが目を開けるとそこは見知らぬ街だったのだ。ぐるりと一周見渡す限り、先程の軍も、大破した戦車もなく、そして見覚えのない観覧車が見える。一瞬にして違う街に来たらしいかった。
「それで、俺はあいつを倒せば返してもらえるんかな」
宙には一人の髪の長い少女。辺りは急に人払いされたように人がいなくなり、チュウカと少女以外は誰も生きていなかった。
「まだ喧嘩の途中だったから、いろいろ困るんだよなぁ!」
少女は百もの数にその姿を増やし、行く手を阻もうとする。
……が、そんなことはわかっていたかのようにチュウカは飛び上がると偽中華包丁を一回転させながら着地。出現したばかりの分身を二体倒し、片手で刀を相手に向け直した。
「手荒い歓迎じゃないか、けけ。いいぜ、全て乗ってやる。思惑通り動いてやるから、やることきちっとやれよ、誰かさんよぉ!」
チュウカはそう叫びながら三度飛び上がり、次の目標へ切りかかっていった。
電信柱と電信柱の間の電線にしゃがむように立ち、チュウカは周囲を眺めていた。ここは街であることは変わりないようだが、表でも裏でもない。俺の街じゃない。そう思っていた。
「面倒なのもうろついてるしよー、なんだかね。けけ」
姿を現したり消えたりする超能力者のような人間がさっきから周りをうろついている。こっちに来て以来、何やら動きを監視されているようであった。
監視。
この異世界に来る前もそうだった。その日も軍の監視から逃れるどころか、喧嘩を吹っ掛けていた日であった。それはいつものことで、軍の連中のドンパチを偽中華包丁一本で押し返していた頃合いだったと記憶している。
「おりゃあああ!!」
「撤退! 撤退ー!」
戦車の装甲にどうやってか穴をあけるほどの衝撃を与え、大破・走行不能にさせたチュウカは雄叫びを上げ、逃げ惑う軍へ追撃を喰らわさんと、次の攻撃として手にしていた立て看板を投げた。看板には「飛び出し注意」と小学生のイラストが書かれている。
「くそっ、腰抜け共。逃げ足だけは早いぜ……あっ?」
瞬間。
刹那。
光。
それは軍のものではない、宙のどこかが光ることで視界を手で遮らざるを得なかった、その次の時であった。チュウカが目を開けるとそこは見知らぬ街だったのだ。ぐるりと一周見渡す限り、先程の軍も、大破した戦車もなく、そして見覚えのない観覧車が見える。一瞬にして違う街に来たらしいかった。
「それで、俺はあいつを倒せば返してもらえるんかな」
宙には一人の髪の長い少女。辺りは急に人払いされたように人がいなくなり、チュウカと少女以外は誰も生きていなかった。
「まだ喧嘩の途中だったから、いろいろ困るんだよなぁ!」
少女は百もの数にその姿を増やし、行く手を阻もうとする。
……が、そんなことはわかっていたかのようにチュウカは飛び上がると偽中華包丁を一回転させながら着地。出現したばかりの分身を二体倒し、片手で刀を相手に向け直した。
「手荒い歓迎じゃないか、けけ。いいぜ、全て乗ってやる。思惑通り動いてやるから、やることきちっとやれよ、誰かさんよぉ!」
チュウカはそう叫びながら三度飛び上がり、次の目標へ切りかかっていった。