【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


このことがきっかけで、私と仁香は親友になった。

最初は中井さんたちから仁香を守るためだったけど、息投合するのに時間はまったくかからなかったのだ。

仁香は私のことをすごく慕ってくれて、私も仁香とは波長がすごく合うから一緒にいる時間がすごく好きだった。


親友――私たちの関係は、まさにその言葉が指すとおりだった。


けれど楽しい時間は長くはなく、仁香は中学3年生を間近に控えた3月、遠くの中学校に転校してしまった。


「中学の時は仲良しだった。親友だった」


自分の声が弱々しく震えているのがわかる。

ずっと蓋をしていた、あの日の記憶と対峙する時がきたから。


忘れることもできない、高校1年生の夏。


中学1年生の時の学級委員長の先導で、同窓会が行われた。


その同窓会にはもちろん仁香も招待されており、私は仁香と再会するのを心待ちにしていた。


けれど、高校にあがり久しぶりの再会にみんながうきうきした空気の中で、仁香は私に言い放ったのだ。


『……もう紫苑ちゃんとは友達なんかじゃない』と。


後頭部を思い切り殴られ、心臓を氷のナイフで一突きにされたような感覚だった。


一瞬、その言葉を理解することができなくて、

『あ、あはは……』

こぼれたのは、へにゃへにゃでへたくそな笑顔だった。


そんな私を仁香は憐れむような目で見ていた。 


あの時、仁香はどうしてそんなことを言ったのか。

私にはもう逃げることしかできなくて、その理由を訊くことができなかった。


仁香とはもうそれきり。


中学時代はお互いスマホを持っていなかったうえに、引っ越し先も知らないから、仁香にはもう会えないと思っていた。

――未来日記というものが現れるまでは。


今もまだ氷のナイフは胸に刺さったまま、抜けることも溶けることもない。

その痛みを抱えながら水の中でもがくように息をしている。