【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


──仁香とは中学1年生の頃、同じクラスだった。

クラスが一緒になってすぐは違うグループに属し、名前と顔だけを知っているくらいの、そんなただのクラスメイトだった。


けれどその関係が大きく変わったのは、その年の6月のこと。


その日の放課後、下校している途中で教室に忘れ物をしたことに気づいた私は、学校に戻った。


そして教室までもうすぐというところで、もうとっくに日が暮れているというのに教室の中から賑やかな声が聞こえてきて、私は反射的に足を止めていた。


そうっと教室の中を覗くと、仁香が同じグループの女子たちに買い物へ走らされようとしている現場に遭遇した。


『ほら仁香~、早くいつものジュース買ってきてよ~! 私喉乾いちゃった~』


がらんとした教室に、普段から派手な振る舞いで目立つ中井さんの声が響く。


『あ、うん、ごめん……!』


続けて聞こえてきたのは、仁香の焦ったような声。

まわりの女子たちは『急げ急げ、がんばれ』と笑い声をあげるだけで、みんなこの光景を当然のものとして愉しんで見ているだけ。


大人しく気の弱かった仁香は、ぱしりとしていいように使われていたのだ。


まわりにはばれないよう、こうして放課後、だれもいなくなってからのタイミングを狙っていることや、その言い慣れた口調と空気感から、日常的におこなわれていることだと察することができた。