【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように





時刻は朝の10時。

最寄りのバス停の前で、手鏡を使って前髪を整える。


この前、柊依と朝を迎えたあの日はひどく寒かったけれど、あれを最後にずっと暖かい日が続いている。

家からバス停まで歩くと、大した距離でもないのに、じんわりと額に汗が浮かんだ。


前髪と共に気持ちを整えていると、向こうから歩いてきた人物に「よう」といつもの調子で声をかけられた。

柊依だ。


「おはよう」


手鏡をショルダーバッグの中にしまい、私は挨拶を返す。


休みの日に柊依と会うなんて、少し不思議な心地だ。


パーカーに薄手のジャケットを羽織り、細身のパンツに身を包んだ柊依は、今日も自然光を発光しているのではないかと思うほど眩しい。


『俺がちゃんと見届けてやる』


あの日、私の不安を見透かしたかのように、そう言った柊依。

その言葉のとおり、詳しい経緯も説明も聞かずに、私に着いてきてくれることになっていた。