【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


ファミレスの窓から空が白み始めるのを見て、私たちは長居したファミレスを出た。


柊依はまだ薄暗い空の下を、ぐんぐんと迷うことなく歩いていく。

その慣れた様子から、前にも歩いたことのあるルートを進んでいるのだろうということが察せられる。


住宅街を抜け、駅を越え、まだ目を覚ましていない街を歩いていく。


15分ほど歩いたところで、芝で覆われた斜面に突き当たる。

石造りの階段があって、柊依はそれを上り始めた。


そうして階段を上りきると、街を一望できる高台に出ていたことに気づく。

視界を遮るものがないため、水平線が見える。


「もうすぐだな」


黒いベルトの腕時計を確認し、柊依は西の空を見る。


西の空には白い月がぽっかりと浮かんでいた。


でもこっちは太陽が現れる方角じゃない。

朝日は東の空から昇ってくる。


「なんで西の空なの?」


てっきり朝日を見に来たのだと思っていた私は、ついそう尋ねてしまう。


「それは見てのお楽しみ」


空に音符を飛ばしながら、もったいぶって教えてくれない柊依。


空を見上げれば、夜の終わりがもうすぐそこまで迫っているのを知る。