【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように





「綺麗な朝が見える場所を知っている」と言う柊依は、朝が来るまで時間を潰そうと提案してきた。


綺麗な朝というのは、朝日のことを言っているのだろうけど、なんとなく抽象的な物言いが気になった。


柊依は移動する前、バックの中から水色のノートを取り出した。

未来日記だ。

まさか持ち歩いているとは思わなかったけど。


「同じ過ちは繰り返さないようにしないとな」と言って柊依は、日付が変わって今日の欄に『紫苑と俺はまわりには大人に見える。紫苑が家にいないことを家族は気づかない』と記した。

これで準備は整ったというわけである。


そして時間を潰すために私と柊依が入ったのは、24時間営業のファミレスだ。


ドリンクバーを頼んだ私に対して、柊依はいちごパフェを注文した。

こんな深夜にいちごパフェを食べるとは柊依の胃袋はなんてタフだろうと感心せずにはいられなかった。

おまけに柊依が甘党だということも初めて知った。


時間を潰しながら、私たちは他愛ない会話を交わした。


友達と話す時はつい相手にばかり合わせて聞き役に徹することが多い私だけど、柊依は私の話をちゃんと促し、話しやすい空気と機会を作ってくれる。

だからか柊依と話していると、変に気を遣うこともなく、心がのびのびと気楽なままでいられる。

きっと柊依は話をするのがうまいのだろう。


会話はいろいろな分岐点を迎えたけれど、夜の街に出かけることになった詳しい理由を、柊依は訊いてこようとはしなかった。


そうしているうちに、時間はあっという間に過ぎていった。

楽しい気持ちはある反面、あんなに明けるのが嫌だった夜がどんどん過ぎていくのが、正直怖くもあった。