【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


「で? なにしてたんだよ」


上体を屈め、目線の高さを合わせてくる柊依。

この揺るぎないまっすぐすぎる瞳に、私は弱い。


一度ならず二度も夜の街で遭遇してしまった以上、きっと追及を免れることはできない。


私は小さく息を吐き出し、それから本音を心の奥からそっと声にして取り出す。


「……怖かったの。朝を迎えるのが」

「朝を?」

「また一日がスタートしちゃうでしょ。だったら永遠にこの夜が続けばいいのにって思った。そしたら逃げてたの、夜の中に」


なぜ朝は頼んでもいないのに巡ってくるのだろう。

朝が来れば、否が応でも学校生活という現実に向き合わなければいけなくなるのに。


自分でもわかっている。

これはただの逃げでしかないと。

でも無力な私には、現実から目をそらし逃げることしかできないのだ。


ばからしいと思っただろうか。

呆れただろうか。

そんな不安が心を占める。


どうしてそう思うに至ったか――当然の流れでそれを訊かれると思ったけど、予想に反して柊依はそこに踏み込んでこようとはしなかった。

代わりに、端正な顔に満開の笑みを浮かべる。


「じゃ、俺たちが朝を迎えにいってやろう」


目の前で太陽が輝いたのを、私は見た。