【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


「どうして……」

「ダチん家行ってた帰り。どうしてはこっちの台詞だ。こんな時間になにやってるんだよ、危ないだろ」


私を責める語気が荒い。

この前夜の街で出会った時は、怒ったりしなかったのに。


「つーか、似合ってねぇよ、そのリップ」


柊依の手が伸びてきたかと思うと、私の口元を親指のつけ根でぐいっと拭われる。

それは菫になるための変身アイテムである深紅のリップだった。


するとその時。


『――似合ってないよ、その――』


ふと頭の中で、柊依の台詞がいつかの景色と重なった。

泉から在りし日の記憶があふれ、なにかを思い出しそうになる。


けれど違う、それより今は。


「……ごめん」


まるでぽつりとこぼれ落ちるように、謝罪の言葉が口をついて出ていた。