【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


冷たいというよりも凍えるような夜風が、頬を撫でていく。

そういえば今朝のニュースで、今夜から明日の朝にかけて12月下旬並みの異例の気候になると報道されていた。


けれど私の体温とはかけ離れた冷たい外気が、自分が生きていることを実感させてくれる。

高校からずっと、体も意識も溶けてしまいそうで、生きている心地がしなかった。


ネオンの光が目を突き刺し、私を追い立てようとするようだ。


虚無感を抱えながら、あてもなくふらふらと彷徨う。


もうなにも考えたくない。

ただ、夜の中に閉じこもっていたい。

そうして朝というまた新たな現実のスタートから逃げたい。


この世の中は不平等で溢れているのに、1日の時間が24時間であることはだれにも平等だ。

嫌で理不尽な平等だと思う。


眩しいコンビニエンスストアや駅前を越え、ぽつんぽつんと並ぶ街灯の明かりしかない道を歩いていた時だった。


「……い、おい!」


突然夜闇を切り裂き、私の鼓膜に一筋の声が届いた。

それと同時に、背後から手首を掴まれる。


ずっと呼ばれていたらしい。

はっとして振り返れば、そこに立つ存在に目を見張る。


「柊依……」


だってそこには柊依が立っていたのだから。