【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように





夜の街は、まだ開いているお店の光やネオンであふれていた。

もうすっかり寝静まっていると思ったのに、思っていたよりも明るくて、人々の鼓動の音を感じられる。


体の怠さをおして音をたてないよう家を抜けだし、夜の街に飛び込んではみたけど、特に目的はない。


ただずっと夜の中にいたかった。

夜の喧噪の中に溶け込みたかったのだ。


ふらふらとあてもなく夜道を彷徨う。


酔っ払いらしきサラリーマンたちが、向こうから歩いてくる。

相当飲んでいるのか、足取りがおぼつかない。


なんとなく恐怖がじわりと背筋を這いあがってきて、私は俯きがちに歩を進める。


すれ違いざま、お酒の匂いが鼻をかすめた。


見慣れているはずの街が、夜というベールを被るだけで、見知らぬ他人の顔へと変貌している。

私だけ浮いていて、中に入っていくのを拒まれているみたいだ。


昼間とは違う夜の空気の中、私を追い込むように孤独が押し寄せてくる。