【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


すると、その時だった。


「あっ」


隣で夢奈がはっと息をのんだ気配があった。

鈍い思考を振り払い夢奈の視線の先へと顔を向けた私も、彼女と同じように小さく息をのんでいた。


理由はわからない。

でも今、一番会いたくなかった気がする。

君――柊依に。


「よう」


クールなルックスとは相反して人懐っこい笑顔を浮かべた柊依は、片手をあげて私に近づいてくる。


けれどその手前で、なにかに気づいたようにそれまでの笑顔が困惑の表情に上塗りされる。


「紫苑、顔色悪いぞ」


柊依の声がなぜかくぐもって聞こえる。


笑わなきゃ。

なんでもないって言わなきゃ。


だって私は平気だから。

平気なのに、夢奈に不審に思われる。

心配なんてされたら余計に惨めになる。


ほら、笑え。

笑顔なんて得意じゃないか。


そう思うのに、表情筋が固まってしまったかのように動かない。