【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


「ねぇ、聞いてる?」


夢奈の声に、そこではっと我に返る。

私より背の低い夢奈が、私の顔を覗き込んでいた。


「……え」

「だから、ひどくない?って言ってるの」


……あれ、こういう時はどう答えるのが正解なんだっけ。

酸素が足りないのか頭が回らない。

そんなことないよって言わなきゃ。

でも言ったら嫌われる……?

そうだ、夢奈に合わせなきゃ。


「夏鈴、ひどいね」

「やっぱり? 紫苑もそう思うよね? 夏鈴ってさ、調子いいところがあるよね。笑って言えばなんでも許してもらえると思ってるっていうかさ」

「わかる」


顔に貼り付けた笑みが、鏡を見ずとも引き攣っているのがわかる。

こんな時でさえ笑顔を崩せないのは、なんでだろう。