今日は夏鈴が風邪で休みだから、夢奈とふたりきり。
トイレから教室までの廊下をふたりで並んで歩いていると。
「ねぇ、紫苑~」
夢奈が私の腕に抱きつくように絡んできた。
知ってる。
これは愚痴の合図だ。
夢奈は口を開けば男子の話か愚痴だ。
愚痴ってどんな相槌を打つのが正解かわからないし、聞いていても気分がいいものじゃないから得意じゃない。
けど、ここであしらえば角が立つ。
だから私はあくまで話を聞く姿勢を見せる。
「どうしたの?」
「夏鈴のことなんだけど、話聞いてくれない……?」
夏鈴のいないタイミングでその話題を持ち出したということは、夏鈴には聞かせたくない話なのだろう。

