【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように





一度かけ違えたボタンをもういちど直すには、間違えた分をすべて外して再び一からかけていくしかない。

それは決して容易なことではなく、途方に暮れるような作業だ。

だから私はボタンをかけ違えないよう、空気を読み、時に“自分”を殺しながら慎重に生きてきたはずだった。




2時間目終わりの休み時間。

私は夢奈とふたり、トイレの鏡を覗き込んでいた。


指先を少し濡らし、ぱやぱや出てきてしまっている髪を撫でつける。

朝は綺麗にまとまるのに、時間が経つと出てきてしまうこの言うことをきかない短い髪が嫌いだ。


そうして胸元まである髪を手櫛でとかすと、夢奈も同じタイミングで隣の鏡から前傾になっていた上体を離した。


トイレに行く時は決まって西側端っこの、教室から離れているトイレを使うのが習慣となっていた。

教室がある東側にもトイレはあるけれど、西側のトイレは古くて離れているため、使う生徒が少なく混まないからという理由らしい。

けれどそのおかげで、後ろの人を気にすることなく身だしなみを整えられる。

遠いからいちいち面倒だけど、そういう点ではメリットもあるから、一長一短といったところだろうか。