「なっ……」
距離をとろうとするも、「動くな」と私の後頭部に手が回され、体勢を固定される。
「ふう~」
私たちのこの状況を知る由もない先生は、呑気にタバコを吸っている。
高校の敷地内は禁煙だから、人目のないこの屋上はタバコを吸うにはうってつけというわけだ。
先生の慣れている様子から見るに、いつも隠れて吸っているのだろう。
早くいなくなってくれと必死に願うのに、羽を伸ばしているのか、なかなか退散する気配がない。
ダイレクトに伝わってくる甘い香水の匂いに、くらくらと頭の芯が揺れそうになる。
息の仕方がわからなくて、肺が苦しい。
なんで、なんで。
なんでこんなに心臓の音がうるさいの。
心臓の鼓動が質量を持って響き、体全体を揺らす。
だめだ、柊依に聞こえてしまうのに。
男子と距離が近いというだけで、こんなにも動揺してしまうのはなぜ。
柊依が男子だから?
それともその男子が柊依だから――?

