【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように





3階より上に上がるのは初めてのことだ。

屋上に続く階段を上がると、その先は未知の世界。


突然現れた小さな鍵は、屋上を施錠する鍵穴にぴったり嵌まった。


柊依がドアを開けると、視界を真っ青な水色が覆った。

びゅうっと勢いよく、澄んだ風が吹きかけてくる。


「わぁ……」


柄にもなく感嘆の声がもれてしまう。


「おー、いい景色」


360度、果てしない水色に囲まれている。

こんなにも近くで青空を見たのは初めてかもしれない。


「屋上って、ずっと憧れてたんだよな」

「私も……小さい頃は、高校生になったら屋上なんて簡単に行けるものだと思ってた」


それなのにいつからだろう。

自分には辿り着けないと端から決めつけ、手の届く範囲の外には見向きもしなくなったのは。

動くよりも先に頭で自分の限界を決めつけ、背伸びや無理をしなくなったのは。

そうしていつしか妥協と諦めがクセになってしまっていた。


両手を空に向かって伸ばし深呼吸をすると、肺いっぱいを新鮮な空気が満たす。