【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


話は終了。

というか、会話以前のことだった。


さっさとこのやりとりに見切りをつけ、踵を返して空き教室を出ようとした私。

けれどそれより早く私の腕を掴んだ柊依の手が、それを許さなかった。


「それならへーき」


柊依の声に引っ張られるようにして振り返れば、柊依が例のブツを片手に持っていた。


「これがあればそんなの問題ないんだよな」


それは未来日記だ。

悔しいことにその信憑性を認めずにはいられなかった未来日記。

なんでも叶えてしまう、魔法のような代物。


「どういう意味?」

「ここに〝紫苑が3時間目の授業にいないことにだれも気づかない〟って書けばいいだろ」


……うっ。

言われてみれば、たしかにそれはそうだ。


言い返す余地が見当たらず、言葉に詰まっていると。


「そういうわけだから、今日だけ俺に付き合え」


柊依が私の頭に手を置き、朗らかにそう言い放つ。


顔だけはむすっと不服そうにしてみせるけど、その実内心では、目の前の笑顔をまるで太陽みたいだと思ってしまった。

分厚い雲さえものともせずまわりを照らして輝く、こちらが目を逸らしてしまいそうになるほど眩しい太陽、それが私にとっての柊依だった。