【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


細身だけど、背負われていると、その背が見た目よりも広いことに気づく。


歩くたびに振動が、柊依の熱が、背中を通じて伝わってくる。


「ねぇ、重くない?」

「全然」


重くないわけなんてないのに、なんてことないように言ってふわりと微笑んだ気配が、風に乗って伝わってきた。


こうして密着していると自分の鼓動の音が伝わってしまいそうで、無音をかき消すように必死に思考を巡らせ会話の糸口を探す。


「妹さん、名前はなんて言うの?」

「なずな」

「妹さん……なずなちゃんはおいくつなの?」

「ちょうど10歳離れてる」

「兄弟はなずなちゃんだけ?」

「そーだよ」


10歳離れてるということは、きっと今小学2、3年生といったところだろうか。

きっと溺愛しているんだろうなということは安易に想像ができる。


「今度会わせてね」

「いつかな」


柊依の返事を聞きながら、そこで初めて自分が変なことを口走ったことに気づいた。


柊依とのこれからの話をしてしまうなんて、私、どうかしている。

いつだって柊依とはこれっきりという心持ちでいるというのに。


それ以上考えるのを投げ出すように、私はぱたんと柊依の背中に頬をつけた。

香水によるものか、甘い香りが鼻孔を満たす。


柊依といると必要以上に心が凪いでしまって、自分でも気づいていなかった感情が声になってこぼれてしまう。


それが心地いいということだと、この時の私は知らなかった。