【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


「なんでここに……!」

「んー、なんでって、理由なきゃだめ?」


予想外の角度からの回答に、うっと言葉に詰まる。

180センチはある大きな背を軽く曲げ私を見下ろしてくるその瞳には、一切の淀みがない。


「あんたといたら私まで素行不良だって勘違いされる……」

「でも俺ら、一晩共にした仲だし?」

「その言い方やめて……!」


柊依は私のペースを乱してくる天才だと思う。


学校の中では〝いい子〟の私を演じているのに、柊依といたらそれが崩れてしまう。


「私に絡んでこなくたってあんたにはいるでしょ、いくらでも絡みたいっていう友達とか」


常にまわりに人がいる柊依のことだ。

私に構っている暇なんてないと思う。


それに私なんかに構うより、同類のお友達といた方が柊依にとって有意義であることは間違いない。


昨日の夜、ふとしたきっかけで同じ時間を過ごすことになってしまったけど、住む世界が違う私たちは、本来なら交わることなんてないはずだったのだから。


「なにそれ」

「私といたって時間の無駄ってこと」


言いながらほんの少し情けなくなってくる。


けれど柊依は、そんな私の屈折した感情もなにもかもを包み込んでしまうのだ。


「俺は紫苑といたいんだよ」


あまりにまっすぐな言葉に面食らい、胸が詰まる。


私といたい、なんて。

ずっと求めていた、ずっと言われたかった。

どんなに手を伸ばしても届かなかったその言葉を、なんで柊依ははぐらかしたりせず私にくれるんだろう。

見失っていた私の存在価値を真正面から肯定されたようで、どうしたらいいかわからなくなる。