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「お願い……! 逢沢さん、今日の日誌書いておいてくれないかな……!」
放課後。帰ろうとスクールバックの中に教科書を移動させていると、クラスメイトの安斉さんが声をかけてきた。
クラスメイトではあるけど、よく話したりする関係ではない。
なんで私に?というのが率直な思いだった。
安斉さんには、他にいつもつるんでいる友達だっているのに。
「この後、彼氏に急に呼び出されちゃってさ! 逢沢さんならこういうの書くの早い?ってか慣れてそうだし、今回だけ頼まれてくれないかな……!」
顔の前でぱちんと手を合わせ、お願いポーズをしてくる安斉さん。
……いや、私だってこのあと予定あるけど。
慣れてそうってなに?
普段全然話さないのに、こういう時だけ友達みたいな顔するんだ。
安斉さんの言葉の端々に突っかかって、心の中で毒づく私はきっと性格が悪い。
けれどその毒を表面に出すことは決してしない。
私はにっこり笑顔を作ると、快く頷いて見せた。
「いいよ。早く彼氏さんのところに行ってあげて」
私、逢沢紫苑は、みんなから頼られる優等生。
いい子で、優しくて、頭がいい。
それがみんなからの〝私〟像だ。
優等生でいれば、みんなが私を認めてくれる。
この生き方が、私の存在証明なのだ。

