鼓動が逸る。
信じられない思いで教室棟の裏に回った私は、
「……っ」
目の前に広がった景色に目を見張った。
そこにはピンク色が激しく吹きすさび、桜花爛漫の字のごとく桜が咲き誇っていた。
――そう、柊依の予言どおり。
昨日まで樹木の影すらなかった中庭のど真ん中に、突然大きな桜の木が生えたのだから、そりゃあもう学校中が大騒ぎだ。
超常現象としか言いようのない事態に、「宇宙人の仕業じゃね?」とか「これは絶対に精霊の木に違いない!」とか、いろいろな憶測の声が飛び交っている。
荒涼としてだれにも見向きもされなかった中庭が、こんなにも大勢の生徒で賑わっているのは、初めて見た。
そしてこんなにも笑顔で溢れているのも。
みんな上を向き、瞳をピンク色に染めている。
4月も下旬となり、街中の桜はとっくに散ってしまって、ピンク色の余韻などどこにもなく木々は青々とした葉を茂らせている。
季節外れにも関わらず堂々と満開に咲き誇っているからか、余計に神秘の力を感じずにはいられない。
「桜だったな」
突然、近くから聞き覚えのある声が降ってきた。
その声の主を、私は耳からの情報だけで悟ってしまう。

