【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


柊依の家から私の家までは、なかなか遠かった。

藤公園を挟んで、反対側にあったらしい。

地図アプリを時折確認しながら、家に着いた頃には9時になっていた。


柊依にしつこく言われたから、一応【着いた】とだけメッセージを送り、門扉を開けて庭を抜ける。


両親はもう仕事に出かけている時間だけど、なんとなく気まずくて、そろーっと音をたてないように家のドアを開ける。

……と、私の体は、ドアを開けた体勢のままぎくっと硬直していた。だって。


「す、菫……!」


まるで私を待ち構えていたかのようなタイミングで、菫がリビングから出てきたのだから。


「おはよう、紫苑」


さらさらのサテン生地のパジャマを着たままの菫が、猫のような大きな瞳で私を見つめる。

その表情には呆れのような色が浮かんでいる。


「まさか紫苑が朝帰りなんてね」


弁解の余地もない。


だって自分が一番驚いてる。

自分が朝帰りなんて。


本当は現実逃避にちょっとだけ夜の街を散歩して帰ってくるはずだったのに、まさかこんな大事になってしまうとは。