【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように





夜の間に熱は下がっていたらしい。

柊依の家を出る頃には、体の調子は普段どおりになっていた。

きっと知恵熱だったのだろうと、自分の中でそう結論づけた。


柊依は、家まで送ると言い張ったけど、私はそれを頑なに拒んだ。

すると「心配だから、家に着いたら連絡して」と食い下がってきたので、渋々受け入れることにした。

そんなわけで強引に連絡先を交換させられ、私のメッセージアプリには、新しい連絡先が登録されたというわけだ。


家への帰り道を歩きながら、私はスマホに視線を落とした。


メッセージアプリを開き、【市村柊依】の名前をタップする。

あまりこだわりがないのかアイコンは初期設定のままだ。


……なんか変な感じ。

昨日まで人生が交差するなんて思ってもみなかったあいつの連絡先が手の中にはあって、タップさえすれば電話もメッセージも一瞬で繋がってしまう。

あまつさえ“柊依”なんて下の名前で呼んでいる始末だし。

一夜でいろいろなことが、あっという間にひっくり返った感覚だ。