【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


……なにこれ。

突然摩訶不思議な世界に足を踏み込んでしまったように感じられた。

もし仮にこれが全部作り話だったとして、私をからかうためだけにわざわざこんな手の込んだ小道具まで用意するだろうか。


「柊依は信じてるの?」

「まぁ、俺だって最初はなにかのいたずらだと思ったけど、そういうことするような人いないんだよな。実際、書いたことも本当に起こったし、信じるしかないっていうか」

「え、なにか実現したの?」

「ノートを見つけた日、次の日に晴れた空に虹が架かるって書いたら、本当に雨が降ってないのに虹が見えた」


……覚えている。

先週の木曜日、雲ひとつない晴天の空に大きな虹が架かったのだ。

休み時間、クラスメイトの女子が窓の空に虹を見つけ、大騒ぎしていたから記憶に残っている。

実際、私のスマホのカメラフォルダの中にも、その時の虹の写真が収められている。


どうやらこの日記の日付は、柊依がこのノートを見つけた翌日から始まっているらしい。

へんてこだと思う。

普通の日記帳ならば、1月1日や4月1日など節目である日付から始まるはずなのだから。


先週の木曜日――4月20日(Thu)という日付が先頭にあり、そこには柊依の筆跡らしい文字が並んでいた。


【晴れた空に虹が見える】