準備もなにもしていないこの状況で、制服を家に取りに戻るだけでも遅刻は免れないだろう。
一刻も早く家に帰らなきゃ。
焦る一心で布団から抜け出そうとする。
でもその腕を柊依の手が掴んでいた。
「おい、動くな。まだ体本調子じゃないだろ」
「でも学校に行かないと……っ」
優等生である私が遅刻も欠席もするわけにはいかないのに。
「高校は平気だよ。今日は休みだから」
「そんなわけないでしょ」
平日真っ只中の水曜日に、休みだなんてなに言ってるんだ、この男は。
けれど柊依の眼差しも手の力も揺るがなかった。
「だから、高校を休みにしたんだよ、俺が」
頭の上をクエスチョンマークが舞う。
ますますなに言っているのかわからない。
「意味わかんないんだけど」
こんな切羽詰まった時に、そんな馬鹿げた冗談に構っている余裕なんてない。
今すぐこの手を撥ね退けて、高校に向かわなきゃいけない。
それなのに、柊依の瞳に嘘の色が一ミリも見えないから動けない。
柊依の瞳に縫いつけられたままでいると、柊依の形のいい唇が思いもよらない言葉を紡いだ。
「紫苑はさ、俺が未来を変えられるって言ったら信じる?」
「……は?」

