【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


自分の声が途切れたその瞬間、声を攫うように風が吹いた。

そして風がページを開くように、足元に置いておいた未来日記がぱらぱらと音を立てて開いた。


開かれたページは、柊依が亡くなった日の次の日付。

そこには人知れずひっそりと文字が並んでいた。


『椿が明日も明後日もその先も、いつまでも笑っていられますように』


並んだ文字を見つけた途端、崩れるように感情が決壊した。

急激に押し寄せる涙の波に、わたしは両手で顔を覆う。


「ふ、うう……っ」


柊依から向けられた言葉が、胸の一番柔らかい部分を締めつける。

自分がいなくなる未来を知りながら、それでもわたしに寄り添ってくれていた。


……ずるいよ。

柊依はいつだってわたしのことばかり。

自分が死ぬことより、残されるわたしのことばかり考えていた。


柊依のこと、なんにも思い出せないはずなのに。

それなのに、込み上げてくる。

胸の中にたしかにあった柊依への恋心が、再び息づきぽうっと熱を持つ。

泉からあふれるように、愛おしさで窒息しそうになる。


記憶は死んでも、柊依への想いだけは息絶えなかった。


好きだ。

本当に好きだった。

どうしようもないくらい、わたしのすべてをあげたいと願うくらい、好きだった。