【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように





空港を出て住宅街を越え藤公園を越え、ようやく家に着くと、靴を揃えて脱ぐ間も惜しむように、家の中に駆け上がる。


「え、椿!? 飛行機は!?」


リビング前の廊下で掃除機をかけていたお母さんの驚いた声を、意識の端で拾う。

だけどそれに構っている余裕はなかった。


2階にある菫の部屋を、脇目もふらずに目指す。

そして。


「菫……!」


勢いよく部屋のドアを開けると、勉強机で本を読んでいた菫がこちらを見た。


「椿?」


ここにいないはずのわたしの登場に菫は驚いたように目を丸くし、やがてわたしの手の中の『君に贈る物語』を目に留めた。


「これ、どういうこと……?」


肺が張り裂けそうなほど痛いことを、今の今まで忘れていた。

ぜぇぜぇと荒く乱れた呼吸で、肩が大きく揺れる。