【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


がくんと下に降ろしたままの手から、シルバーリングが外れて転がる。

いつからか嵌めるようになっていた、サイズが合っていないわたしのものではないリング。


そのリングをおぼつかない手つきで拾えば、内側に刻印された文字が見えた。

今更見なくても覚えている。

その文字は、“You are my Reason”。


……点と点が繋がっていく。

ばらばらだったパズルのピースが、あるべき位置へ収まっていく。


こんなの馬鹿らしいと思っている。

まさか未来日記なんてものがこの世に存在するなんて、そんな話があるわけない。

それなのに理性では否定しつつも、心がついてこないのだ。


「とう、い……」


戦慄き震える唇が、気づけば彼の名を紡いでいた。


物語の中の彼のことを、知らないのに知っている。

顔さえ、声さえ、匂いさえ、体温さえ、なにひとつ思い出せないのに。

会ったこともないはずだった彼を、わたしはずっと探していた気がするのだ。


──椿。

耳の奥で、雑音に紛れてだれかが呼んでいる気がする。


頭と心がばらばらだ。


このままこうしていたって、なにもわからない。

だから今すぐあの子に会いに行かなければいけない。

すべてを知るこの物語の作者・藤澤廻。

――否、双子の妹である菫に。