俺は病気で死ぬわけではなく、自ら命を絶つと未来日記に書いた。
それならば俺の余命はまだ何年も残っているはずだ。
俺の心は、家族を喪ったあの日に死んでいた。
でもこの命で紫苑を救えるなら、俺にも生きている理由があった。
生きる理由をだれかの中に見つけられたら幸せだと紫苑は言ったけど、俺の理由は紫苑だった。
俺の全部を君にあげたかった。
紫苑のためならなんの悔いもなく自分の命を差し出せる。
そしてもうひとつ、忘れてはいけないことがあった。
──それは、紫苑の記憶から俺の存在を消すこと。
俺が命をあげたことを知ったら、紫苑は自分を責めるかもしれない。
でも俺がいない世界で、紫苑の涙を拭ってやれないから。
紫苑の心を守る方法が、これしか思いつかなかった。
ほんのたまに、気まぐれに空を見上げた時だけでいいから俺を思い出してくれたら嬉しい――そんな淡い思いには硝子の蓋を閉めて。
俺は決心と共にペンを持つ。
らしくなく、その手は震えていた。
かけがえない家族を喪ってもう2年も経ったんだ。
やっと孤独から解放されると思った。
その日が来ることを願って待ち侘びていた。
それなのに、君が俺に眩しい明日をくれたせいで、俺は──。

