「市村……」
市村の存在により、頭にかかっていた霞が一気に晴れる。
そうだ、昨日の夜、倒れちゃったんだ。
よりによって市村の前なんかで。
慌てて上体を起こすと、それに合わせてはらりとなにかが落ちた。
そこで初めて、私の額の上に濡れタオルが置かれていたことに気づく。
「ここは……」
「俺ん家。熱出してたみたいだから、夜遅くて病院もやってなかったし、とりあえず俺ん家連れてきた」
「そう、だったんだ……」
昨日頭と体の怠さは感じていたものの、まさか熱を出していたなんて。
市村は突然倒れた私のことを家まで運んでくれて、そのうえ看病までしてくれていたらしい。
ほぼ初対面にも関わらず醜態をさらした上に、とんだ迷惑をかけたことに、羞恥心よりも自責の念が勝る。
私は耐えきれなくなって、市村の視線から逃げるように視線を俯けた。

