【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


『大丈夫? 風邪ひくよ』


彼女が心配そうにもう一度訊いてきた。

今度はより首を深く傾げて。

俺がぼーっとして反応をしなかったからだ。


俺は瞬時に口角を上げ、にっこり笑って見せる。


雨が降っていてよかった。

涙を隠してくれる。

涙も雨も色のないただの水滴にすぎないのだ。


『ん、大丈夫。ありがとね』


これで完璧。

そう、思ったのに。


『似合ってないよ、その笑顔』

『え?』


傘を差しだしながらほんの少しの躊躇いの色と共に放たれた言葉に、俺は呆然とした。