【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように





空の上では愛する家族が待っている。

未練なんて、この世にもうない。

そう思いながらも、本当はたったひとつ、心残りがあった。

それがきっと、ゴールまで約1年の猶予を設けた理由になったのだろう。


心残り、それは彼女――逢沢紫苑に関することだった。


紫苑との出会いは、中学3年生最後の春休みに遡る。


家族を喪い、一周忌を迎えた日。

夜の19時頃、俺は藤公園に逃げ込んだ。


一周忌という現実を直視しなければいけない日だったからか、余計に広い家の中に独りでいると、精神がおかしくなりそうだった。

俺は1年経ってもまだ、家を覆うひっそりとした冷たい空気に慣れずにいた。


脱力するように、寂れた木製のベンチに腰掛ける。


そうして星ひとつ見えない真っ暗な空を見上げていると、いつしか雫が顔の上に落ち、それはまもなく止めどない雨になった。


もちろん、傘なんて気の利いた防御は持っていない。

無防備に雨に打たれながら、このままだれに気づかれることもないまま夜の闇の中に溶けてしまいたいと、そんな馬鹿げたことを思った。


朝は嫌いだ。

どの夜にも無条件に朝はついてきて、どんな事情も知らんぷりする世界に俺を置き去りにする。

どんなに喚こうが苦しもうが、時間の進みは止まってくれない。

父さんが母さんが、なずながいない新しい1日が、またやってきてしまう。

それがたまらなく怖く、苦しかった。