【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


けれど、形あったものが崩れ落ちるというのは残酷なほどに呆気ないものだ。


そう、それは2年前の3月30日のこと。


その日、家族は隣県にある遊園地に出かけた。


きっかけは俺の一言だった。

『春休みだし、たまにはなずな連れて遊びに行ってきたら』


仕事が忙しく家を空けがちな両親が、珍しく揃っていた日だった。


なずなはまだ小さく、遊び盛りだ。

春休みなのにずっと家にいるというのもかわいそうだった。


俺は春休み明けに提出する課題があったため、ひとり家に残ることにした。


『おにーちゃん、行ってきます!』


お気に入りのキャラクターのリュックを背負い、ぺかぺかの笑顔を浮かべて、家を出て行ったなずな。

俺は頬をふやかしながら、その笑顔を見送った。


……けれど、家族が帰ってくることはなかった。

遊園地に向かう途中の高速道路で、後ろから突っ込んできたトラックと壁に挟まれ、車はぺしゃんこに潰された。


突然、呆気なく、一瞬のうちに。

抗う間もなく、俺の一番大切なものは俺の前から消えてなくなった。