【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


「ねぇ、柊依」

「ん?」

「未来日記持ってる?」

「ああ、持ってるよ」

「私に書かせてくれないかな」


自分の声が凛とした輪郭を纏って聞こえた。


すると柊依はバックから未来日記を取り出しながらも、不思議そうな顔を私に向けてくる。


「書くっていったって、このノートは俺が書かないと意味ないけど」


未来日記の最初のページに記された、注意事項の中のひとつ。

このノートは持ち主である柊依が記入したもののみ有効となる──。


それは頭にあったけれど、それでも。


「いいの。願掛けみたいなものだから」


柊依からボールペンと未来日記を受け取り、空色の表紙を開く。


迷うことなく開いたのは、今年の12月31日のページだ。

そして。


【来年も柊依と一緒にいられますように】


一言、そう書き記す。


未来日記に書いても無効なのはわかっている。

それでも、私の願う未来はそれだけだから。

それ以外はなにも望まないから。


「書けた?」

「うん、書けた。あ! 言っとくけど見ないでよね」

「なんだよそれ、逆に気になるわ」

「ちょっと、だめだからね!」


静かな公園に、柊依を制する私と、「えー」と不服そうな柊依の声が響く。


未来に続く足跡をつけた私たちを、真っ青な空だけが見守っていた。


……大好きだよ、柊依。

だからどうか君の未来でも、隣にいさせてね。