【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


「すごいじゃん、紫苑」

「ね! まさか見つかると思わなかった」


ちょんちょんと指の先で四つ葉のクローバーをつつく。

すると柊依が不思議そうな顔を向けてきた。


「摘まねぇの?」


私は膝の上に折りたたんだ腕に、そっと顎を乗せる。

心は波のたたない水面のように凪いでいた。


「うん。私、今充分幸せなんだ。だから、幸せを探してるだれかのために取っておく」


夜の街に逃げずにはいられなかった、あの日の私のような子に。


私だって柊依に出会わなかったら、きっと今も夜の街を彷徨っていただろうから。


胸を張って幸せだと言える今の自分を抱きしめたい。

けれど、間違いばかりで必死に幸せを探していた過去の自分も抱きしめてあげたい。

過去の私も、たしかに私の一部なのだから。

暗い場所を知っているからこそ人は強くなれるし、幸せもより輝いて見えるのかもしれない。


すると不意に頭がぐしゃぐしゃと撫でられた。

顔を上げれば、柊依の腕がこちらに伸びていた。


「眩しいな、紫苑は」


柊依がくしゃりと顔を歪めて笑う。

どこか泣きそうで、でもとても嬉しそうで、その笑顔を見ていると私までなぜか無性に鼻の奥がつんと痛んだ。