【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


すると隣で同じく時計台を見上げながら、柊依がふっと表情を緩めたのが、空気で伝わってきた。


「紫苑の笑顔を守るためなら、なんだってするよ、俺は」


吸い込んだ澄んだ空気よりも先に、柊依の言葉が柔らかく、けれど深く胸に突き刺さった。


柊依はいつだって、私の両手なんかじゃ抱えきれないほど、そして私には不釣り合いなほど輝かしく温かい言葉をくれる。

その言葉が胸に届くたび、私は自分の心臓が動いていることを思い出す。


でも私だってあげたいのだ。

好きな人(⠀柊依⠀)には口下手になっちゃう私だけど、気持ちをちゃんと伝えたい。

思っているだけじゃ、伝わらない。

ちゃんと言葉にしなければ。

だって今、柊依は隣にいてくれるのだから。


「そういうふうに思ってるの、自分だけだって勘違いしないでね」

「え?」


勇気が足りなくて、私がしたかったものよりも遠回りな言い方になってしまった。

それでも想いを伝えられたことは、自分の中で大きな一歩だった。


「……大事にするわ。紫苑がくれた言葉」

「うん」


柊依は馬鹿にしたり流したりせず、まっすぐに欠けることなく私の言葉を受け取ってくれる。

それがどんなにありがたいことか、多分柊依は知らないのだろう。

柊依にとってそんな優しさは、息をするのと同じように当たり前だから。


柊依に触れるたび、好きが募る。


「ま、俺の方が強く想ってるけどな。そこは負ける気ないから」

「張り合わないでよ」


くすくす笑い合いながら時計台の前を離れる。