【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


土曜日にもかかわらず今日も閑散としていて、静かな空間だ。

遊び相手のいない遊具も心なしか寂しそうだ。


「どこに埋めるの?」

「時計台の裏の空き地がいいかなって」

「うん、いいと思う。あそこなら人も来ないしね」


そんな会話を交わしながら、ふたりで公園の奥に向かう。


すると空き地の手前で、時計台が姿を現した。


藤公園の奥に、公園の番人のようにひっそり佇む古い時計台。

ずっと時を止めていたけれど、柊依が再び動かした時計台。

時計台は今、たしかに時を刻んでいる。


私は時計台の前で思わず立ち止まっていた。

私が立ち止まったのに合わせて、隣の柊依も足を止める。


小さい頃はひどく大きく見えていたけど、高校生になり身長も伸びた今では、なんだか目線が近く感じられた。


「ありがとう、時計台直してくれて」

「え?」

「私も昔から馴染みがあったから。また動き出してくれて嬉しい」


止まってしまった時計台を見るたびに悲しくて、やるせない気持ちが募った。

だれの目にも留まらない透明人間みたいで、その姿を見るたびに、自分と重なるようだったから。

きっと私の時が止まったって、この刻一刻めまぐるしく変わる世界では、だれにも気づいてもらえないんだろうって。


でも柊依は、時計台が止まっていたことに気づいていてくれた。

それだけでたしかにあの時、救われた気がした。