けれどその時だった。
不意に目の前の世界が揺れたのは。
頭がぐわんぐわんと芯から揺れて、視界が定まらない。
走ったせいかと思ったけど、様子がおかしい。
全然収まらない。
それどころか急激にむかむかとした吐き気が込み上げてきた。
「まじで平気? 顔色悪いけど」
「そ、そんなこと……」
まずいと思った時には、手遅れだった。
自分の声がくぐもって、どんどん遠くなっていく。
「おい、大丈夫か?」
ざぁぁっというノイズの中で、市村の声が聞こえる。
それはまるで暗闇に差す、一筋の光の矢のようで。
だから咄嗟に、私は手を伸ばしてしまったの。
「た、すけ……」
声が途切れる。
まっすぐ立っていられなくなって、私の世界は突然電源プラグを引き抜いたように暗転した。

