【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


「どーした。今日の紫苑、様子おかしい」


少し伸びてきて、睫毛にかかる私の前髪。

長い指先でそれを除けながら、柊依が私の顔を覗き込んできた。


いつだって柊依は人の心の機微に敏感だ。

そうやって今までも、立ち止まったり迷ったりする私に歩幅を合わせて寄り添ってくれた。


心配なんてさせている場合じゃないのに。

多分、柊依に自分の思いを隠すのは無理だと思った。

駆け引きなんてできない。


私は意を決すると、肺に溜まった重い空気と共に声を吐き出した。


「……昨日、聞いちゃったんだ、菫に。柊依の家族のこと」


柊依のビー玉のような瞳にさざ波がたったのを見た。


「そっか。聞いたか。ごめん、俺の口から言えなくて」


こんな時でさえ相手への気遣いばかりの柊依に、声にならず、つんと鼻の奥が痛んだ。