【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように





『昼休み、屋上に集合。
屋上の鍵はいつもの方法で開けておくように』


休み時間になると、私は柊依にメッセージを送った。


昨日、菫に聞いた話がまだ大きなしこりとなって喉の奥につかえていた。


今思い返してみれば、違和感しかなかった。

柊依が家族について話す時、過去形だったこと。

その眼差しの中に切なさや苦しさが潜んでいたこと。


改めて思い知る。

私は全然柊依のことを知らなかったのだ。


柊依は私の心に寄り添い、触れようとしてくれた。

それなのに私はいつだって柊依にしてもらうばかりで、一度でも柊依の心に寄り添うということができていただろうか。


柊依はいつだってキラキラ輝いていて、傷なんてあるはずがないと錯覚していたのだ。

本当は笑顔の裏に、こんなにも大きく暗い現実を背負っていたというのに。


呼び出したところで、なにをするのか、なにをすべきなのかわからなかった。

私なんかが踏み込んでいいのかわからない。

私には想像もできないくらい大きく深い傷に触れていいのかわからない。


わからない尽くしで、途方に暮れそうになる。


でも、今胸の中にたしかにある柊依を想う気持ちだけには嘘はない。

それだけが私を動かす原動力だった。


私のエゴかもしれない。

それでも一瞬でも長くくだらないことで笑っていてほしい。

私の知らないところで悲しい思いをしてほしくない。


だから手探りでも、君の心に近づきたいのだ。