【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


すると菫は遠い目で、鉛を吐き出すように呟く。


「柊依の過去を思えば、大切な人を喪いたくないのは当然なのよね」


菫の言葉に、私は引っ掛かりを覚えた。


「え? 柊依の過去って?」


菫の顔色がさっと変わった。

まるで言ってはいけないことを言ってしまう失態を犯したというように。


「もしかして聞いてない……?」


菫の声が、触れれば割れてしまいそうなほどの緊迫感をはらんでいる。

普段は冷静沈着な菫のその様子からも、さっきの言葉に深い意味があることは明白だった。


「なに? 教えて。柊依になにがあったの」


得体の知れない焦燥感に胸をかきむしりたくなるような衝動をこらえて菫に詰め寄る。

すると菫は観念したように、静かに重い口を開く。

そうして語られたのは、途方もなく暗くて残酷な事実だった。


「柊依は3年前家族を喪ったの。不慮の交通事故でね、柊依だけが残された」