【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


柊依がコインを入れると、プリクラ機が陽気なトーンで話し出した。


『最初はふたりでハートマーク! 3、2、1、カシャッ』


言われたとおりハートマークを作ったけれど、タイミングがずれて半目になってしまった。


「紫苑、半目じゃん」

「わ、笑わないでよ!」


笑っている柊依に抗議しようと、そちらに体を向けた時、息が止まるかと思った。

狭い撮影ゾーンの中で、柊依は鼻先が制服にくっついてしまいそうなほど近くにいて。


慌てて逃げるように顔を逸らそうとして、けれどその前に顎をくいと持ち上げられた。


顔を持ち上げられ、否応なしに瞳と瞳とがかち合う。

色素の薄い柊依の目に、私が映り込んでいるのが見える。


「俺のこと、少しは意識した?」

「え……」

「答えて」


『次は、ふたりで頭こつんポーズ! 3、2、1、カシャッ』


機械の音声とシャッター音が聞こえてくる中、私の意識は柊依に捕らわれ、抵抗ができなくなる。


答えるまできっと柊依は私の瞳を逃がしてはくれない。


意識しているどころじゃない。

私の心は、もう手遅れなくらい柊依の色に染まっているのに。


口先だけで否定したって、柊依には私の心に潜む感情を見透かされてしまいそうな気がして。


「……降参」


絞り出すようにこぼれたのは、その四文字だった。

追い詰められた私にはもう、視線を逸らして逃げることしかできなかった。


「はは。俺の勝ち」


すぐそばで柊依が音符を飛ばし得意げに笑う。