【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


「あ! 待ちなさい!」


警察官の声が背を追ってくる。

けれど市村の足は止まらない。


警察官から逃げることになるなんて、品行方正で通っている昼間の私には想像もできなかった。


一瞬の躊躇いもなく風を切る。

喧噪がかき消され、風の音だけが聴覚を支配する。

私たちを見ているのは、夜空で無数に瞬く星たちだけだ。


車や人の往来がない暗い夜道を、暗闇を切り裂きどこまでもどこまでも走る。


市村に手を引かれて走っていると、まるで背中に大きな羽根が生えているんじゃないかと思えた。

世界中の時が止まって、世界にふたりきりになったような錯覚を起こす。

びゅんびゅんと向かってくる風もまるで私たちを包み込んで味方をしてくれているようで、その冷たさもいつの間にか感じなくなっていた。


このままどこまでも行けてしまいそうな気がするのは、どうして――。