「柊依……?」
思わずその存在を繋ぎ止めるかのように名前を呼ぶ。
すると柊依は前を見据えたまま、綺麗な唇を流れるように動かした。
「紫苑のことが愛おしいってことだよ」
「え?」
聞き間違いでなければ、なんだか今とてつもない爆弾を落とされた気がする。
驚いて顔を上げれば、すぐそこに柊依の顔があって、くすりと茶目っ気たっぷりに笑った。
さっきまでの悲しみの気配をかき消すように。
「恋人だから、こういうこと言っても許されるだろ」
「な……」
返す言葉も見つからず、突然繰り出された甘い攻撃に狼狽える私。
愛おしいなんて大層な愛の言葉の意味は、ゲームに勝つためでしかない。
きっとこんなやりとりは、柊依にとっては日常茶飯事。
そう頭ではわかっているのに、心が意思に逆らって過敏に反応してしまう。
柊依は女子の扱いに慣れているうえ、恋心をもっている私は圧倒的不利な気がする。
「あ、照れた?」
「まっ、まだまだ……!」
ははっと笑うその姿は、いつもどおりの柊依だ。
柊依は自分の気持ちを隠すのが上手だった。
この時私が柊依の隠した本当の気持ちに気づくことができていたら、未来は少しでも変わっていたのだろうか。

