【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


「紫苑の手、小さいな」

「柊依の手が大きいの」


軽口を言い合っていると、ふと柊依がすんと鼻を啜った。そして。


「あー。……なんか、じんときた」


その声の中に湿った気配を察して、私ははっとして顔を上げる。


そこには鼻の先をほんの少し赤くして、眉尻を下げて苦笑する柊依の横顔があった。

その微笑みは、今にも消えてしまいそうなほどに儚くて。


「え? 今?」


そんな突っ込みをしてしまったのはきっと、予想外の事態に面食らってしまったから。


心の中には不安と動揺しかなく、いつもの平常心なんかない。

けれど今私まで取り乱し必要以上に心配したら、余計に柊依の負の波を増長させてしまう気がしたのだ。


「悪い。こういうの、幸せだなって思って」

「幸せって。大袈裟なんだから」

「紫苑と出会ってたしかに幸せだったよ、俺は」


なんでだろう。

目の前にいて、手のひらでその感触と熱を共有しているというのに、今にも柊依が消えてしまいそうだと思うのは。